本記事は、感染症である疥癬についてまとめていきます。疥癬は、ヒゼンダニが皮膚上に寄生することよって発症するものです。
疥癬に感染すると、皮膚に赤いぶつぶつができ、ひどいかゆみをともなうようになります。免疫力の低い高齢者が感染しやすく、介護施設や病院での集団感染が多くなっています。
疥癬の治療は、塗り薬や飲み薬などの医薬品の投薬で行います。疥癬の感染が疑われる場合には、すぐに皮膚科医の診察を受け、スミスリンローションなどの医薬品で対処する必要があります。
適切に医薬品を使用することによって、4~6週間ほどで疥癬を治療することができます。
目次
疥癬(かいせん)かも?発症時の特徴
疥癬は、ヒゼンダニ(皮癬ダニ)というダニが皮膚に寄生することによって発症する感染症です。
ヒゼンダニが寄生し疥癬になると、丘疹や結節とよばれる皮膚の赤いブツブツといった症状が発症します。この赤いブツブツは、以下のような部位に多く発症します。
- 手のひら
- 指の間や側面
- お腹
- 胸
- 足や腕
つまりは、全身のいたるとこにダニは寄生し症状が現れるということですね。
この赤いブツブツは、かゆみをともなうものです。その部位に寄生しているダニが数匹であっても、強いかゆみを引き起こす場合があるので、注意が必要となります。
このかゆみは、身体に寄生したダニに対するアレルギー反応によるものとされています。赤いブツブツは、多くの場合において、かきむしってしまうことで傷や跡となって残ってしまいます。
疥癬(かいせん)の症状
疥癬には、以下の2つのタイプがあります。
- 通常疥癬
- 角化型疥癬
この2つの疥癬の違いは、寄生するヒゼンダニの数です。それぞれの疥癬におけるヒゼンダニの数は次のとおりです。
- 通常疥癬:数十匹以下
- 角化型疥癬:100万匹~200万匹
寄生したダニの数が多い角化型疥癬のほうが感染力も強く、症状もより重いものとなります。
角化型疥癬の場合は、上記の赤いブツブツに加えて、灰色や黄土色のカサブタや角質などが生じるようになります。このカサブタや角質は、かゆみをともなわないものです。
基本的には、通常疥癬が重症化したものが角化型疥癬であると言えるでしょう。角化型疥癬は、免疫力が低下している場合に発症しやすくなります。
疥癬(かいせん)の感染経路
通常疥癬と角化型疥癬とでは、感染の仕方が異なります。通常疥癬の感染は、長時間にわたって患者と直接に肌と肌とを触れ合わせることによって起こります。
短時間の接触では、通常疥癬の感染はほとんど起こりません。通常疥癬に感染してから上記の症状が発症するまでは、だいたい1ヶ月から2ヶ月ほどの潜伏期間があるとされています。
角化型疥癬の場合は、ダニの数が多いことからも分かるように、通常疥癬よりもより感染力が強くなっています。角化型疥癬の患者とは、短時間であっても肌と肌が接触することによって感染してしまいます。
また、角化型疥癬特有のカサブタや角質に触れることでも感染することがあります。角化型患者の衣類や寝具が感染源となることもあるので、取り扱いには注意するようにしましょう。
疥癬(かいせん)の症状が進行すると
疥癬の症状がひどくなると、かゆみはどんどん増幅していくことになります。疥癬のかゆみは、夜になるとひどくなる傾向があります。
そのため、激しいかゆみによって睡眠を妨害されてしまう方もいます。このような重度の疥癬は、免疫機能が低下している人や重度の身体障害や知的障害がある人に多く生じることが報告されています。
また、かゆみが強い部分を強く掻いてしまうことで、皮膚に傷が出来てしまうことがあります。その傷口から他の細菌が侵入してしまい、何らかの細菌感染症が疥癬と併発して発症してしまうことがあります。いわゆる二次感染ですね。
高齢者の場合は、重度の疥癬であってもかゆみの症状がない場合が多いようです。そのため、疥癬への感染に発覚することが遅れてしまうことが多くあります。
疥癬(かいせん)の治療方法
疥癬の治療は、ヒゼンダニの殺虫効果のある飲み薬や塗り薬を用います。飲み薬は、ストロメクトール錠(イベルメクチン)という抗寄生虫薬になります。
ただし、ストロメクトール錠単独では、70%~80%ほどしか症状を治療できないとされています。そのため、ストロメクトール錠で疥癬の治療をする場合には、塗り薬も併用する必要があります。
疥癬の治療に使用する塗り薬としては、次のようなものがあります。
- スミスリンローション(フェノトリンローション)
- イオウ剤
- オイラックスクリーム(クロタミトンクリーム)
- 安息香酸ベンジル
これらを、1日に2回ほど全身に塗っていきます。だいたい4~6週間ほどで症状は改善するようです。
なお、かゆみがひどくなってしまった場合には、抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方されることもあるようです。夜も眠れないほどのかゆみに悩まされている場合には、医師にその旨を伝え、かゆみ止めを処方してもらえないか頼んでみましょう。
疥癬(かいせん)で気をつけるべき事
疥癬は、1970年代には男女パートナーのセックスを介して感染する性感染症として流行していました。その頃は、20代の男女の患者が多かったとのことです。
しかし、現在では、疥癬の患者は高齢者が多くなっています。介護施設や病院など高齢者が集団生活をしている場での疥癬の集団発生が報告されています。免疫力の低い高齢者の場合は、角化型疥癬が多くなるので注意が必要です。
1996年に行われてた調査によると、養護老人ホームの45%、特別老人ホームの79%において疥癬の集団感染があったとのことです。
この状況は現在にいたっても変わっておらず、年間10万人前後もの人が新たに疥癬と診断されています。本記事でまとめてきたような疥癬の症状に心当たりがある場合には、すぐに皮膚科医を受診するようにしましょう。
まとめ:疥癬はヒゼンダニによる感染症
疥癬は、体調0.4mmほどのヒゼンダニが人の皮膚に寄生して発症する感染症です。疥癬の症状としては、患部のつよいかゆみとなります。
このかゆみは夜間に悪化し、ひどい場合はまともに眠れないほどになるようです。現在では、疥癬は免疫力の弱まっている高齢者の間で多い感染症となっています。
疥癬の治療には、塗り薬と飲み薬が用いられます。ともに皮膚科にて処方してもらえるものです。
もし疥癬の疑いがある場合には、すぐに皮膚科専門医の診察を受けるようにしましょう。医薬品で適切に治療することで、4~6週間ほどで疥癬の症状はおさまります。
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