本記事では、原虫感染症である赤痢アメーバ症についてまとめていきます。赤痢アメーバ症は、衛生状態の悪い発展途上国などで広まっている感染症です。
しかし、日本などの先進国においても、男性同性愛者間にて性交感染によって、患者数は増加傾向にあります。
赤痢アメーバ症になると、いちごゼリー状の粘血便が排泄されます。この便は、赤痢アメーバ症に特有のものです。気づいたらすぐに医療機関で検査を受けるようにしましょう。
赤痢アメーバ症の治療には、メトロニダゾールなどの抗原虫剤が用いられます。赤痢アメーバ症が悪化すると命にかかわることもあるので、早期発見・早期治療を心がけましょう。
目次
赤痢アメーバ症かも?発症時の特徴
赤痢アメーバ症とは、その名の通り「赤痢アメーバ」に感染することによって発症する原虫感染症です。世界中で発症が確認されている感染症ではありますが、特に衛生状態の悪い発展途上国での発症が多くなっています。
また、先進国においては、男性同性愛者間での性感染症として患者が増えつつあります。日本においては、年間1,000人前後の人が新たに赤痢アメーバ症として報告されています。
そんな赤痢アメーバ症の初期症状としては、粘血便が代表的です。粘血便とは、通常の便の周囲に大腸の潰瘍からの血液と粘液が付着したものです。通常の便と違い赤っぽい色をしているため、いちごゼリー状の便と形容されることもあります。
この粘血便は赤痢アメーバ症に特徴的なものです。そのため、排泄した便が粘血便だった場合は、赤痢アメーバ症への感染を疑う必要があります。
赤痢アメーバ症の症状
赤痢アメーバ症の症状としては、大きく分けて以下の2つに分けることが出来ます。
- 腸管病変
- 腸管外病変
腸管病変とは、大腸の腸管内にて炎症が起こっている状態のことです。腸管病変の代表的な症状としては、次のようなものがあります。
- 粘血便
- しぶり便(強い便意があるにもかかわらず少量の排便しか出来ない状態)
- 排便時の下腹部の痛み
これらの症状は、重くなったり軽くなったりを数ヶ月から数年間にわたって繰り返すことになります。
腸管外病変とは、上記のような大腸以外の部位に赤痢アメーバが感染してしまっている状態のことです。代表的なものは肝腫瘍です。肝臓に赤痢アメーバが感染してしまうものですね。
このアメーバ性肝腫瘍の症状としては、次のようなものがあります。
- 発熱
- 上腹部の痛み
- 肝腫大
また、肝臓以外にも心臓や脳や肺などで赤痢アメーバの腸管外病変が発症することがあります。
赤痢アメーバ症の感染経路
赤痢アメーバ症は、主に赤痢アメーバに汚染されてしまっている飲食物を口から摂取することによって感染します。いわゆる経口感染(糞口感染)ですね。
口から摂り込まれた赤痢アメーバは、分裂を繰り返しつつ大腸に到達します。そして、大腸の粘膜に寄生し、アメーバ性大腸炎を発症させることになります。このタイプの感染経路によって赤痢アメーバ症になる日本人の多くは、発展途上国からの帰国者です。
また、日本などの先進国では、上記の経口感染以外にも、男性同性愛者間での性交感染も多くなっています。日本国内においては、2000年以降も報告されている赤痢アメーバ発症者数は増加傾向にあります。
この増加分の患者のほとんどは、男性同性愛者における感染であるとされます。アナルセックスによって感染者の便に触れてしまうことよって、赤痢アメーバ症に感染してしまうことになります。
赤痢アメーバ症の症状が進行すると
大腸に感染した赤痢アメーバ(腸管病変)は、数日から数週間のスパンで症状の憎悪と寛快が繰り返されます。症状が重くなった場合には、腸穿孔になってしまう場合があるようです。腸穿孔とは、大腸の腸管の壁に穴が空いてしまうことです。
その結果、消化液や便などが腸の外に漏れ出してしまいます。言うまでもないことですが、腸穿孔となると患部がかなりズキズキと痛むようになります。
肝臓に感染した赤痢アメーバ(腸管外病変のひとつ)が悪化すると、肝臓に出来た膿瘍に穴が空いたり破裂したりすることがあります。
このような症状になると、最悪の場合は死に至ることもあるので注意が必要となります。このようなレベルにまで病状が悪化する前に、以下にまとめるような治療方法にて対処することが必要となります。
赤痢アメーバ症の治療方法
赤痢アメーバ症の治療には、抗原虫剤を用いての投薬治療が基本となります。
赤痢アメーバ症の治療に使われる抗原虫剤の代表的なものとしては、有効成分メトロニダゾールを含有するフラジールがあります。赤痢アメーバの他におもトリコモナス症などの治療に使用される医薬品ですね。
赤痢アメーバ症の治療にあたっては、このメトロニダゾール(フラジール)を1回500mgを1日3回服用することになります。これを10日間連続で服用します。
赤痢アメーバ症の症状がひどい場合には、メトロニダゾールを1回750mgにまで増量することもあるようです。このメトロニダゾールという抗原虫剤は、妊婦には投与することが出来ないので注意が必要となります。
赤痢アメーバ症で気をつけるべき事
赤痢アメーバ症を予防するにあたって注意することには、以下のようなことがあります。
- 衛生状態が悪い地域での食事では、加熱調理が十分でないものを口にしない
- 食器や調理器具が赤痢アメーバによって汚染されていることもあるので、取り扱いには気をつける
このように、発展途上国などにいったときには、赤痢アメーバ症にならないように、口にするものには十分に注意を払う必要があります。
赤痢アメーバ症によって、全世界では毎年5万人前後の人が亡くなっています。決して軽視して良い感染症ではないということです。
赤痢アメーバ症の治療にあたっては、当たり前のことですが、早期発見・早期治療が重要になります。赤痢アメーバ症の代表的な症状である粘血便に気づいたときには、すぐに複数回からなる便検査を受けるようにしましょう。
まとめ:赤痢アメーバ症は粘血便をともなう原虫感染症!
赤痢アメーバ症は、日本国内で年間1,000人程度の人が新規で感染しています。この人数は、2000年代になってから増加傾向にあります。
赤痢アメーバ症は、本来ならば、衛生状態の悪い発展途上国で蔓延している感染症です。しかし、日本などの先進国においては、主に男性同性愛者間でのセックスによって感染が拡大しているようです。
赤痢アメーバの代表的な症状は、粘血便です。便に粘液や血液がまとわりついたものですね。このようないちごゼリー状の便が排泄されたら、赤痢アメーバ症への感染を疑う必要があります。
すぐに医療機関にて便検査を受け、メトロニダゾールなどの抗原虫剤によって治療するようにしましょう。
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