本記事では、性感染症であるHIV感染症(エイズ)についての基本的な情報をまとめていきます。HIV感染症と診断される人は、年間で1,500人ほどいます。その大半が男性の患者であり、ゲイコミュニティ内でのセックスによる感染が多くなっています。
HIVに感染したとしても、抗HIV薬よって早期治療をすることにより、それまでと変わらない生活を送ることが出来ます。HIV感染症は、自覚症状がなく早期発見が難しいものです。
少しでも自身のHIV感染に疑いがある場合には、血液検査などによるHIV検査を受けるようにしましょう。
目次
HIV感染症(エイズ)かも?発症時の特徴
HIV感染症とは、ヒト免疫不全ウィルスによる感染症です。また、エイズとは、後天性免疫不全症候群のことで、HIV感染者が複数ある合併症のいずれかを発症した状態のことです。
つまり、HIVとはウィルスの名前であり、エイズとはHIVが原因となって発症する病気のこととなります。厳密には、HIV感染症とエイズとは違うものとなります。
HIV感染症の初期症状としては、次のようものがあります。
- 発熱
- 喉の痛み
- 頭痛
- リンパの腫れ
- 皮膚の発疹
これらの症状は、HIVへの感染後2~4週間ほどで発症するとされています。風邪などの体調不良時の症状と似通っているので、これらの初期症状だけでHIVに感染したと気づくことは難しくなっています。
そのため、HIVへの感染の有無を知るためには、血液検査を受けることが必須となります。
HIV感染症(エイズ)の症状
上記のようなHIV感染症の初期症状は、発症からだいたい数週間ほどで収まります。その後は、HIVに感染していながら、何の症状も出ない時期が続きます。
この期間は、無症候性キャリア期とよばれます。この症状がゼロの期間がどれだけ続くのかには、個人差があります。早い人で2年ほど、長い人で15年ほども自覚症状がない状態が続きます。
自覚症状がないため、この段階においても、HIVに感染しているかどうかは血液検査に頼るしかありません。この無症候性キャリア期にも、体内では感染したHIVは増殖を続けています。
そのため、感染者の免疫機能は徐々に低下していくことになります。一定のレベルまで免疫力が低下すると、次のような他の病気を発症しやすくなります。
- 下痢
- 体重の増減
- 帯状疱疹
- カンジダ症
HIV感染症(エイズ)の感染経路
HIVの感染経路としては、粘膜や出血をともなう皮膚の傷などとなっています。中でも多いのが、セックスによる感染です。男性の場合は亀頭部分の粘膜の小さな傷、女性の場合は膣内の粘膜からHIVが身体に侵入することになります。
特に注意が必要なのが、男性同性間でのセックスです。HIVの感染はゲイコミュニティ内で増加しているとの報告があります。
また、セックスによる感染以外にも、HIVには次のような感染経路があります。
- 血液感染
- 母子感染
血液感染とは、輸血や注射器・注射針からのHIVの感染です。覚せい剤利用時の注射器の回し打ちなどですね。
また、母子感染とは、母親のHIVがお腹の胎児に感染してしまうことです。このため、妊婦健診においては、HIV検査も一緒に受けることが求められます。
HIV感染症(エイズ)の症状が進行すると
上記の無症候性キャリア期でHIVの感染に気づかず放置をしていると、エイズとよばれる免疫低下が原因となる病気が発症することになります。厚生労働省では、エイズとして23の病気を指定しています。
この23の疾患のいずれかが発症すると、エイズと診断されることになります。エイズと認定される感染症の代表的なものとしては、次のようなものがあります。
- 真菌症:カンジダ症、クリプトコッカス症など
- 原虫症:トキソプラズマ脳症、クリプトスポリジウム症など
- 細菌感染症:非定型抗酸菌症、化膿性細菌感染症など
- ウィルス感染症:サイトメガロウイルス感染症、単純ヘルペスウイルス感染症など
HIV感染者がこれらのいずれかの感染症を発症すると、エイズと認定されることになります。
HIV感染症(エイズ)の治療方法
現時点においては、一度感染してしまったHIVを身体から完全に排除する治療法はありません。HIV感染症を根治させることは出来ないということですね。
そのため、HIVの感染症の治療においては、体内におけるそれ以上のウィルスの増殖を抑え、エイズとなるのを防ぐことが必要となります。この治療にあたっては、抗HIV薬とよばれる以下のような医薬品を使用することになります。
- 核酸系逆転写酵素阻害剤
- 比較参詣逆転写酵素阻害剤
- プロテアーゼ阻害剤
- インテグラーゼ阻害剤
このようなタイプのさまざまな抗HIV薬があります。HIV感染症の治療にあたっては、これらの抗HIV薬の中から、3剤以上を併用することになります。これらの抗HIV薬での治療をきっちりと行うことで、HIVを他人に感染させる確率を低くすることも出来ます。
HIV感染症(エイズ)で気をつけるべき事
HIV感染症において注意するべきことは、できる限り早い段階でHIVへの感染に気づき、抗HIVによる治療を開始することです。HIVの治療の開始時期の遅れれば遅れるほどに、症状は重くなり生存率なども低くなってしまいます。
理想はエイズ発症前に治療を開始することです。最近では抗HIV薬も進歩しており、早期治療ができればそれまでと変わらない日常生活を送ることも可能です。
エイズが発症した後も治療をしないでいると、多くの場合において2~3年以内に患者は死んでしまうことになります。上記のように、HIV感染症は自覚症状がなく気づきづらいものです。
現在でも、30%ほどの人がエイズになるまでHIVの感染に気づかないでいるというデータもあります。繰り返しになりますが、少しでもHIVの感染に疑いがある場合には、すぐに血液検査を受けることが必要となります。
まとめ:HIV感染症は早期治療が大事
1985年に日本国内での初めてのエイズ患者が見つかって以来、HIV感染者数は右肩上がりに増え続けています。
2008年ごろからはHIV患者数は頭打ちとなり、年間1500人ほどが新たにHIV感染者として報告されています。このうちの9割近くは日本人男性であり、ゲイコミュニティ内におけるセックスによる感染が7割近くを占めます。
HIV感染症の治療においては、早期発見・早期治療が何よりも重要です。最近では、国や自治体が行う無料・匿名のHIV検査なども実施されています。
もし、少しでもHIVへの感染の疑いがある場合には、これらを利用し血液検査を受けるようにしましょう。個人でできる検査キットなどもあります。心当たりのある方は、ぜひチェックしてみて下さいね。
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